地盤工学研究室

Research

研究内容

地盤工学研究室(稲積研)では、地盤環境の持続可能なマネジメント、防災、および環境に優しい維持管理を目指しています。地盤改良技術と先進的な地盤材料の研究により、自然災害に対する強靭な地盤を構築し、社会環境との調和を図ることで、未来の都市基盤を支えます。シミュレーション、データサイエンス、AIを活用し、気候変動への適応性を持つ地盤の開発を進めており、これらの研究を通じて、持続可能な社会の継承と発展に貢献する知見を提供しています。

【自然ハザード;液状化;AI;リスクマップ;防災・減災】
AI と GID を活用した液状化リスク評価と精密な液状化ハザードマッピング

本研究は、人工知能(AI)技術および地盤情報データベース(GID)の活用を通じて、液状化リスクの評価およびハザードマップの作成に焦点を当てている。これまで、横浜市および浦安市における液状化リスクの精密な評価を目指し、既存の地盤情報データベースを基にAIを利用した未知の地盤情報の予測を行っている。予測された地盤情報を基に、PL法を適用し液状化の危険度を算出し、これにより詳細なハザードマップを作成している。このアプローチにより、既存のハザードマップに比べ、より高精度のリスク評価が実現された。結果として、地震発生時における液状化による潜在的被害のより正確な予測および適切な対策のための基盤情報を提供することに貢献している。これは、地盤災害リスク管理分野におけるAIの応用可能性を示唆する重要な事例である。

【自然ハザード;土砂崩壊;AI;リスクマップ;防災・減災】
AI – GID – GIS の統合による地盤・土砂災害リスク評価と包括的地盤ハザードマッピング

本研究は、人工知能(AI)、地盤情報データベース(GID)、および地理情報システム(GIS)を統合利用することにより、地盤・土砂災害予測の精度を大幅に向上させる新しい手法を開発している。令和6年に発生した能登半島地震の事例を通じて、提案技術が地盤・土砂災害発生時のリスク管理と対策計画の策定に如何に貢献可能であるかを検証する。さらに、気候変動により増加する異常気象の文脈において、地盤・土砂災害の事前予測と影響軽減策の重要性が高まっている。本研究は、将来の自然災害対応策を指向する上での新たな節目となる成果を目指している。

【自然ハザード;地盤沈下・陥没;AI;支持層深度;防災・減災】
アンサンブル法による高精度地盤データ空間分布予測モデルの開発とその地盤工学への応用

本研究では、地盤沈下および地盤陥没問題に対処する新規なアプローチとして、アンサンブル学習法を採用した機械学習モデルの開発に注力しており、地盤調査データベースからの地盤データの空間分布予測に関する高精度な手法を提案する。従来の限られた調査データに基づく経験則に頼る地盤の性質予測を、科学的かつ定量的な手法によって改善し、地盤調査の精度および効率の向上を図る。本研究では、関東地域の3,360件の地盤調査データを用いて、支持層深度に関する精度の高い予測を達成している。これにより、土木工学および地盤工学分野におけるリスク管理と予防措置の策定に寄与することが期待される。

【自然ハザード;土砂崩壊;数値シミュレーション;対策技術;防災・減災】
地すべり・斜面安定性向上のための最適水平・垂直ドレーン配置による革新的戦略

本研究の目的は、斜面崩壊の誘因を特定し、これに対抗するために水平ドレーンを含む最適な排水システムの設置位置を決定することにある。これにより、盛土崩壊リスクの軽減と斜面安定性の向上を実現し、地すべりによる損害を予防および軽減する新たな戦略を展開する。本研究では、水平ドレーンのみならず、垂直ドレーンの効果についても検討し、斜面保全における最適な戦略を探究する。この革新的なアプローチにより、安全な居住環境の提供と自然災害リスクの低減に寄与することが期待される。

【自然ハザード;地盤災害;数値シミュレーション;対策技術;防災・減災】
MPS – DEM – CAE 連成解析よる地震液状化現象の内部挙動の再現と対策技術へフィードバック

本研究では、地震時における液状化現象の内部メカニズムを解明することを目的とし、MPS-DEM連成解析およびCAE技術を駆使した革新的な手法を提案する。この研究は特に、地震載荷に伴う砂粒子の沈降と間隙水圧の変動を定量的および視覚的に評価し、液状化対策工法の有効性および改善点を明らかにすることに貢献する。2011年に発生した東北地方太平洋沖地震に関するデータを基にした地震波形を使用し、砂質地盤における液状化発生時の挙動を詳細に再現し、可視化を行った。この分析により、地震動による載荷後の砂粒子の噴出現象や、地盤内部での過剰間隙水圧の累積および砂粒子間の有効応力の低下など、重要な現象が明らかになった。本研究は、液状化現象に対する理解を深め、より効果的な対策開発に向けた基礎を築くものである。

【建設リサイクル;発生土;中性化;CO2固定化;SDGs】
循環型社会を目指した流動化処理土のアルカリ低減と二酸化炭素固定化の同時最適化

建設現場における廃棄物の有効活用およびCO2排出の削減は、持続可能な開発目標(SDGs)の達成において重要な課題である。本研究では、模擬CO2を添加した流動化処理土を活用し、建設発生土に含まれるCO2を炭酸塩として効率的に固定化するプロセスを開発し、その固定化量を定量化する試みを行っている。加えて、流動化処理土のアルカリ性を石膏系固化材を用いて中和することによるアルカリ性低減の最適化に関する研究も行っており、これらの研究は建設業界の持続可能な発展に貢献し、CO2排出の削減および地盤環境の改善へ向けた新たな手法を提供するものである。

【建設リサイクル;地中既存杭;数値解析;補強・再利用;SDGs】
地中既存杭の補強・再利用技術の開発による持続可能な都市再生(SDGs 目標 11 への貢献)

本研究は、老朽化した社会基盤に関する問題に取り組み、地中既存杭の補強及び再利用を通じて持続可能な都市開発に向けた新たな方向性を提案する。先端的な3次元弾塑性有限要素法(FEM)解析を用いて、無損傷の杭、損傷を受けた杭、および損傷杭の補強後の支持力を精度高く評価する。初期の研究成果によると、損傷を受けた杭の補強によりその支持力を顕著に回復させることが可能であることが実証されている。この革新的な手法は、廃棄物の削減とCO2排出量の低減に寄与し、持続可能な開発目標(SDGs)の目標11「住み続けられる都市とコミュニティを実現する」に貢献する。

【掘削孔;材料・工法;数値シミュレーション;環境保全;SDGs】
地盤掘削孔に対する転圧式埋戻し法の開発による資源再利用と環境負荷低減

本研究は、日本の建設業界が直面している環境負荷の低減と資源再利用の挑戦に応えるため、土砂を用いた革新的な転圧式埋戻し技術を提案する。この技術は、老朽化したインフラ設備の建て替え過程における地盤掘削孔の充填性を向上させることを目指している。従来のセメントスラリーや流動化処理土といった材料に代わり、環境負荷の低い天然土砂を使用することで、地盤変位を最小化しつつ資源の再利用を促進する。MPS-CAE解析および3次元弾塑性有限要素法(FEM)解析を通じた定量的な評価により、本技術の有効性が実証されている。これにより、持続可能な社会の実現に寄与し、建設現場から発生する土の削減が期待される。

【基礎工;施工性能;数値シミュレーション;合理化;技術革新】
軟弱地盤上の社会基盤の強靱化に向けた基礎工法の効率性と安全性の向上

本研究は、社会基盤技術の進化に焦点を置き、中でも軟弱地盤上での建設作業に不可欠な場所打ちコンクリート杭工法の効率化に関して考察を深めている。この工法においては、掘削安定液の使用が重要な役割を果たしている。具体的に、本研究では実験および最先端のマルチフェーズシミュレーション技術(MPS-CAE)を活用し、安定液中でのコンクリート置換効率とその影響因子について詳細な分析を行っている。特に、安定液の劣化がコンクリートの行動に及ぼす影響、および施工不良の潜在的原因となるスライム蓄積や安定液粒子の残留に着目している。この研究により、建設技術の向上を目指した新たなアプローチが提示されており、業界における実践的応用に対する重要な洞察を提供している。

【トンネル;施工性能;数値シミュレーション;合理化;技術革新】
都市地下構造物建設における泥土圧シールド工法の土砂流動管理の改善

本研究は、都市部の地下構造物建設に不可欠な泥土圧シールド工法に焦点を当て、土砂流動管理の改善を目指すものである。従来の手法では、土砂の流動性がスランプ試験や技術者の経験に依存して評価されていたが、本研究では泥土の塑性流動性と土圧の関係を明らかにするために模型実験とその再現解析を通じて可視化を試みている。特に、MPS-CAE技術を用いることで泥土試料の塑性流動性を効率的かつ正確に可視化し、土砂流動管理の客観的かつリアルタイムな改善への道を開いた。このアプローチにより、掘削現場での土砂流動管理が精密になり、地下構造物の建設における安全性と効率性が大幅に向上することが期待される。

【地中熱;エネルギーパイル;圧密沈下;数値解析;自然エネルギー】
エネルギーパイルを活用した地中熱利用システムの開発と軟弱粘性土地盤への影響評価

本研究は、地中熱という再生可能な自然エネルギー源を効率的に活用する実用的な方法を提案している。特に、構造物の基礎として機能するエネルギーパイルを活用した環境に優しい空調システムの効果に焦点を置き、特に軟弱な粘性土地盤における長期間にわたる熱サイクリングの影響について検討を行っている。エネルギーパイルを用いることで、建築物の空調システムからの余剰熱を地中へと放散し、地中熱を有効活用することが可能である。本研究では、27°Cから40°Cの範囲で合計648時間にわたる熱サイクリング実験を実施し、その結果、軟弱粘土地盤における二次圧密沈下が平均して611時間(64.19%)短縮されること、および熱サイクリングの停止後に不可逆的な圧密沈下の蓄積が観察されたことが確認されている。これらの結果は、地中熱利用技術のさらなる発展における地盤挙動の理解と環境影響の最小化に向けた重要な指針を提供するものである。

【送電網;土壌比抵抗;実験;分析;技術革新】
送電網建設における土壌比抵抗予測モデルの開発

本研究は、タイの送電網建設プロジェクトに革命をもたらす可能性があるものであり、特に埋立土の選定における土壌比抵抗という課題に対する革新的な解決策を提案している。土壌の電気的特性の深い理解は、安全で効率的な送電網システムの設計において極めて重要である。本研究では、地盤の含水率、密度、土粒子の性質を含む複数の地盤工学的特性と、それらが土壌の電気抵抗率にどのように影響するかについて追究している。この目的のため、実験室試験および現場試験から得られたデータに基づき、重回帰分析、数値解析、ニューラルネットワーク、非線形回帰モデルなどの統計的および機械学習技術を用いて土壌比抵抗の予測モデルを開発している。本研究の成果は、送電網ステーションの設計と建設におけるリスクを最小化し、タイの地域社会の安全性および送電網の信頼性を向上させることへの貢献を目指している。

既存杭の引抜工法の開発と引抜孔が周辺地盤に及ぼす影響

 高度経済成長期に建設された大量の建築物の更新、同じく大量に建設された道路構造物の高齢化が今後集中的に進む中、建築構造物の解体需要は今後ますます高まっていくと予想される。その中、既存杭の引抜き工事では引抜き杭の残置、周辺地盤の沈下、跡地利用の際の地盤環境の悪化等、施工中・施工後ともにさまざまな問題が生じている。同時に、杭の引抜き跡には引抜孔が形成されるが、引抜孔に注入される充填材にも未だ明確な規定は存在しない。そこで、引抜孔充填材が周辺地盤に与える効果を地盤の弾塑性FEM解析によって検討し、充填材に要求される特性を明らかにしている。

個別要素法による粒状体解析に基づく地盤改良技術の評価

 地盤の安定性を確保することを目的とした地盤改良技術(工法)は、軟弱地盤に人工的な改良を地盤に行うことで目的の地盤強度その他の地質条件を達成する。現状では地盤改良技術(工法)は多く提案されているものの、目標とした地盤改良が実際に行われているかを確認する方法は少なく、地盤改良技術(工法)を評価する方法が必要である。そこで、様々な地盤改良技術(工法)に対して、個別要素法による粒状体解析を行うことでその結果から適切な地盤改良が行われたか、より効果的な地盤改良の方法を考察し、地盤改良技術(工法)の評価への適用性を検討している。

地盤改良のリアルタイム可視化技術の開発

 地盤改良と並行に、地盤をリアルタイムに動態計測する技術と計測した施工情報を可視化するシステムを開発している。これらの技術は国土交通省が推進する i-Construction で示している「ICT技術の全面的な活用」ならびにConstruction Information Modeling(CIM)の導入により、建設生産システムの向上、効率化に寄与するものと考えている。  地盤のリアルタイムな動態計測による信頼性や精度を確保し、生産性の向上を目的とするために、計測データのうちの電流値に着目し、地盤改良に重要なN値を推定する換算式を立案し、その指標結果をもとに施工性の効率化の向上を図っている。

地盤改良の改良範囲・効果のリアルタイム確認技術の開発

 地盤改良体の造成は不可視部であるため、改良体が端部まで造成されているかを確認する必要がある。特に高圧噴射撹拌工法による改良はジェット噴流による地盤切削のため、改良径が土質条件等で変わる可能性が大きい。そのため現在、改良径の確認を簡便に行う方法が切望されている。  そこで、改良体造成状況を「見える化」する技術の開発し、またその状況をリアルタイムで示す手法を提案することで、高圧噴射撹拌工法による地盤改良が計画通りに行われているのかを確認できるようにしている。

薬液注入工法における地盤の不確実性が薬液浸透挙動に及ぼす影響

 薬液注入工法とは軟弱な砂地盤の間隙に液状の固結材を注入する地盤改良工法の一つである。主に、砂地盤の液状化防止や強度増加等、安定した地盤への改良に使用される。薬液注入工法は膨大な施工実績を伴っているが、地盤内に薬液が浸透する挙動は不明確である。さらに地盤は不確実性を伴っているため、薬液の浸透範囲を決定するのは難しい。  そこで、不確実性を再現した地盤断面に対して薬液の浸透流解析を実施し、均質地盤と薬液の浸透挙動を比較・評価している。

新たな防災概念に伴う地盤改良・固体系廃棄物の再利用技術の提案

 開発している自己修復型の地盤改良技術である遮水性コーティングとは、吸水ポリマー系の止水材によって、地盤材料・固体系廃棄物を粒子単位で事前コーティングするものである。
 一連の研究では、遮水性コーティング処理土が地盤改良や遮水処理等で有効に活用されることを目的として、室内試験を通じて固体系廃棄物を利用した遮水性コーティング処理土の重金属溶出特性、アルカリ溶出特性、透水特性および膨潤特性と隆起の関係を明らかにしている。

無機系廃棄物を原料とした固化材の開発と地盤改良材への適用性

 廃ガラスやフライアッシュ等のシリカ成分を多量に含む無機系廃棄物と、アルカリ助剤を熱処理した粉末状のシリカ系混和材を開発している。
 一連の研究において、シリカ系混和材は高炉スラグ微粉末と混合して使用することが固化材として有効であると考えられ、シリカ系混和材と高炉スラグ微粉末との混合固化材はセメント系固化材と比較して高い強度発現ならびに優位な諸特性が期待できることを明らかにしている。

 

超高流動化処理土の開発と粒子法による流動設計の確立

 建設発生土および建設汚泥の利用促進ならびに長距離施工等への対応が近年必要とされている。
 そこで、建設汚泥を母材として、より高い流動性を持つ流動化処理土の開発を実施している。
 一連の研究では、要求品質に対する開発した超高流動化処理土の力学諸特性の実験的把握に努めている。また、流動化処理土の流動性評価において粒子法の適用を試みており、粒子法による流動化処理土の圧送設計も可能としている。

廃石膏ボードの再資源化と地盤改良への適用性

 廃石膏ボードを焼成して得られる再生半水石膏を地盤改良材、特に脱水固化処理材とし、建設汚泥に対する可能性について明らかにしている。
 一連の研究では、廃石膏ボード由来再生二水石膏、半水石膏、無水石膏の添加・混合にともなう含水比の低減効果を定量的に評価するために、石灰安定処理に関する既存の知見を基にして石膏安定処理土の含水比推定式を提案している。

放射性物質による汚染土壌の処理・処分法の確立

 放射性物質による汚染土壌の新たな除染対策ならびに処分方法を立案するため、放射性物質の地盤内浸透挙動を評価している。
 一連の研究では、移流分散方程式に土粒子による吸着および放射性物質の半減期を考慮した項を組み込むことで、放射性物質の地盤内浸透挙動を明らかにしており、当該解析結果は現地での地盤環境調査結果を高い精度で再現できることを示している。

 

重金属による汚染土壌に対する不溶化材の高度化

 土壌汚染は、土壌および土壌内に存在している地下水が重金属等の有害な化学的物質を含有することで、人々の健康や生活環境および生態系に対して悪影響を及ぼす恐れがある状態に陥ることである。
 そこで、複数種の重金属による複合汚染土壌に対する一元的な不溶化の実現を目的とし、複合型不溶化材を提案し、その不溶化効果ならびに不溶化処理機構を試験的に検討している。
 一連の研究では組成および配合比の異なる複合型不溶化材について、不溶化効果に関する各々の特徴を明らかにしている。

 

廃棄物処分場構造における防災・環境保全技術の高度化

 側面・底面遮水工が設けられた廃棄物処分場に対する地盤防災・環境保全技術の確立を目的とし、その基礎となり得る側面・底面遮水工が設けられた廃棄物処分場から廃棄物保有水漏出の平時・地震時リスクを評価している。
 一連の研究では、側面遮水工における廃棄物保有水の局所的な漏水を表現し得る評価モデルを検討することで、側面遮水工の多次元的な配置ならびに透水係数分布を考慮した海面処分場の保有水漏出リスクおよび保有水漏出リスク低減効果の将来予測を実施している。
 同時に、側面遮水工の維持・管理・補修技術の一つとして、側面遮水工内に形成される空間の有効活用技術も提案している。

地盤遮水構造の開発・性能評価・維持補修技術の提案

 廃棄物処分場、特に海面処分場における鋼管矢板を用いた廃棄物埋立護岸(鋼製遮水壁)に対する新技術・新工法として、2つのH鋼を用いた「H-H継手」による鋼管矢板端部(鋼製遮水壁の端部)の継手性能の向上技術を開発している。
 一連の研究は、遮水工として鋼製遮水壁の性能や信頼性の向上を目指した環境技術課題を、独創的に解明している。

 

耐震性鋼管矢板式基礎構造の開発・性能評価

 2本の鋼管とH鋼をあらかじめ工場で連結し一体化させることを考案し、遠心場水平載荷試験、実大材料曲げ試験および現場施工試験等の実施を通じて、高耐力、高遮水ならびに高施工精度という特性をもつ全く新しい鋼管矢板部材である「連結鋼管矢板」を誕生させることに成功している。

地盤調査手法の開発および調査結果の合理的な評価

 改良型スウェーデン式サウンディング試験の開発に着手するとともに、地盤調査結果の断面補間に関して地球統計学的手法の一つであるクリギング法の適用性を検討している。
 一連の研究では、クリギング法が地盤物性値を面的に高い精度で予測できることを明らかにし、一例として戸建住宅地盤の地盤内特性評価に適用できることを示している。

建設系廃棄物の地盤工学的処理・処分・再利用における環境経済性評価

 我が国では環境意識の高まりから廃棄物リサイクルが推進されているものの、リサイクルにはコストを要するため、その市場性が問われている。一方、廃棄物リサイクルを実施する本質は環境負荷の削減である。
 そこで、直接コストに加え、環境負荷を環境コストとして内部化することで、廃棄物リサイクルを社会的に評価する社会環境効率性評価手法を開発・検討している。

災害廃棄物の地盤工学的処理・処分・再利用に伴う環境影響評価

 我が国では現在、2011年3月11日の東日本大震災によって発生した膨大量の災害廃棄物に対する適切な処理マネジメントが求められている。
 そこで、東日本大震災で発生した津波堆積物の処理に関する環境影響を定量化し、さらに、時間スケールを組み込むことで、環境経済と時間軸から適切な処理フローを検討している。
 廃棄物の広域的な処理・再利用の推進は、環境影響ならびに時間の総合的な観点から重要であることを示している。

開発途上国における廃棄物処理に対する環境マネジメント技術の確立

 東南アジアにおける都市廃棄物処理事業の一連(廃棄物の循環、処理、処分、ならびに最終処分場の計画、建設、維持管理および廃止)に対して、環境保全費用と環境負荷低減効果の費用対効果を現地調査・解析に基づき明確にする環境会計システム(ソフト面)の枠組みを提唱している。
 さらには、都市環境問題を克服する技術の一つとして、最終処分場施設においてLandfill gasesを効率的に回収し、Landfill gasesを有効活用したエネルギー発電を行なう環境創造保全事業(ハード面)を提案し、その事業性を環境会計システム(ソフト面)の枠組みから評価している。

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